ギャグの構図とホラーの構図

確か楳図かずおだったと思うんですが、ギャグ漫画とホラー漫画の違いについて話しているのを読んだことがあります。楳図かずおはどちらでもヒット作を描いていますので。ギャグ漫画を描くときとホラー漫画を描くときは、構図が違うんだそうです。同じ出来事を描いても、カメラを離して俯瞰で描くとギャグになり、カメラを寄ってアップで描くとホラーになる、といった話だったと思います。もう10年以上前に何かで読んだだけですので少し記憶違いがあるかもしれませんが、読んだ時に感心したのを覚えています。
デイヴィッド・リンチのマルホランドドライブで、こんなシーンがありました。登場人物のひとりがダイナーの駐車場にいます。何かが気になり、ダイナーの裏手を見に行きます。カメラが寄って、観客はこの登場人物と同じように、ダイナーの裏手に何があるのだろう、と注目します。次の瞬間、突然ホームレスの男性が姿を現します。この登場人物は驚いて心臓麻痺みたいになってしまいますが、これを観ていた時、こちらも心臓がバクバクしたのを覚えています。
DMM TVで、大脱出というコンテンツがあります。複数の芸人が限定されたエリアに閉じ込められ、与えられた課題をクリアすることで脱出を試みるというバラエティ番組です。この中で、他の芸人は最初から2人ずつ別々の場所に閉じ込められているのに対して、クロちゃんだけひとりで砂浜に埋められています。また、他の芸人は課題をクリアしながらどんどん合流していきます。彼らが集まって脱出ルートを探してさまよっている時、突然、物陰からクロちゃんが姿を現します。
この、想定外のもの(人物)が急に姿を現し、登場人物が驚くというイベント自体はマルホランドドライブと同じなのですが、大脱出のときには驚きより笑いが勝ちました。もちろん、リンチの映画とバラエティ番組では観ている側の姿勢が違うだろう、と言うのはその通りなのですが。これを観た時、構図による効果の違いの話に思い至りました。マルホランドドライブのホームレスの出現はどアップであったのに対し、大脱出では、カメラが離れたところからクロちゃんの出現と他の芸人が驚くリアクションを捉えていたからです。
くだんのインタビューを読んで10年以上(もっとかもしれません)経つかと思いますが、ギャグ漫画とホラー漫画を描き分けた才能による見識にあらためて感心することになりました。ただ、小学生の時に読んだ楳図かずおのギャグ漫画は、子どもにとっては少し怖く感じたものではありますが。