夢の効用
嫌な夢をみることがあります。それも非常に現実的な、過去に本当に経験したのではないかという内容の夢です。例えば、他人からの直接的な悪意に晒されて往生するような夢です。自分自身の落ち度を認識しており、そのことについて人が不満を覚えることむべなるかなと思っている。これは現実に起きると大変に苦しい経験となります。夢でみたとしても、本当に経験したことではないかというリアリティを持って迫ってきます。これはつまり、実際には起こっていないことだけれど、本来であればそれが起こっていたとしても当たり前である、自分はそのような罰を受けても文句が言えないのであると、自分自身で考えているということなのです。
ですが、目が覚めてこの夢の内容をはっきりと思い出そうとしても、具体的に自分のどのような欠点に対して他人がどのような悪意をぶつけてきたのか描写することかないません。目覚めた私は夢の内容をそれほどはっきり覚えていられないということもありますが、何より夢の中で持っていたはずの苦しい気持ちがきれいに消え失せているためです。もしかしたら夢の中でもそれほど苦痛を感じていたわけでもなく、ただ気まずい思いをしていただけかもしれません。
そこで初めて思い当たります。夢でみた内容は実際に経験したのだとすれば決して好ましい経験というわけではないけれど、それは自分になんの影響も持たないことに。これは夢だからというわけではなく、現実の経験だとしても同じです。もし他人が私に対して多大な不満を持っており、鋭い悪意をぶつけてきたとしても、それはその人の問題であって私の問題ではないのです。そもそも、自分自身で勝手に自分の落ち度を誇張して、それについての(あるのかどうかもわからない)他人の不満を増幅していただけということもあるわけで、その場合、これはただの一人相撲です。